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ヴッパータールの表紙

FI2618218_1E.jpg少し前のことになりますが…。水門写真家・佐藤淳一氏のブログ、「Das Otterhaus」の記事、「懸垂式の聖地・ヴッパータール」を拝見して、見覚えのある風景に、思わずあっと声をあげました。

と言っても、私はヴッパータールの街に行ったことはありません。このモノレールが描かれた表紙の古本を、ずいぶん前に手に入れたことを思い出したのです。

佐藤氏の写真を拝見して、その古本の表紙絵と見比べてみたくなりました。ごそごそと数回の家探しの結果、先日ようやく発見できたので、佐藤氏のブログにトラックバックさせていただきます。

件の表紙の本は、「子供の科学」の昭和7年6月号でした。
河上をまたぐ鉄の橋脚に架設された、これまた鉄の線路にぶら下がって疾走する電車…、当時からすればまさに「科学の具現化」(?)にひとしい、斬新な光景に映ったことでしょう。

絵柄の面白さもさることながら、この時代の活版(オフセットはまだ、ほんの一部しかないころです)多色刷りの色彩の鮮やかさ、仕上がりの素晴らしさに、久しぶりに目にしたこともあって、しばらく見入ってしまいました。絵の表紙は、写真にはない味わいがあって、実にいいものです。

表紙画の解説を読んだ覚えはなかったので、改めて目次を探してみると「表紙 架空電車 中川巌」とだけあり、残念なことに、やはり本文記事はなし。
これがドイツの風景を描いたものだとわかったのは、かなり後のことだったような記憶があります。

京浜運河や芝浦の運河沿いで、羽田通いのモノレールと併走するだけでも楽しいのに、懸垂式の電車が、腹を見せながら水路上を圧してすっ飛んでゆく面白さは、例えようがないものでしょうね。
モノレールが上空を走るこの川が、可航河川であるかどうかはわかりませんが、もし船で走ることができたら、電車が頭上を通るたびに、意識がぜんぶそっちに持っていかれ、舵がおろそかになるだろうことは、間違いありますまい!

今回、改めて眺めてみて思ったのですが、水路上の空間を利用して、高架式の陸上交通に用いるやり方、その嚆矢がヴッパータールなのではないでしょうか。
だとすると、昨今何かと話題になる、水路上をなぞって造られた東京の高速道路の、お手本となった可能性もあるように思えるのですが、いかがでしょうか…。

余談ですが、このころの「子供の科学」は、土木インフラや工場内部の図解記事が多く掲載されており、本号の本文記事にも、「インクラインとは何か」と題して、見事な多色刷り図解で、蹴上のインクラインが紹介されていたりと、水路バカ的にも垂涎の内容が少なくありません。

戦前の発行とは言え、技術や乗り物に関心の高かった時期だけに、部数も多く出回っているので、古書店や図書館などで探しあてるのも、そう難しいことではないと思われます。