FC2ブログ

河港・小見川の記録写真集

FI2617944_1E.jpg水の上の残影 印画紙に記録された小見川の水運 (ワールドムック428)
篠塚榮三 著 発行:ワールドフォトプレス社
B5判 並製カバー付 148ページ 平成15年8月発行

かなり以前の発行になるものですが、水運を主な題材とした写真集、という意味では、貴重な存在ですので、あえてご紹介します。もちろん、現在でも入手できる本です。

小見川在住の写真家・篠塚榮三氏が、戦前から数十年にわたって撮影した、下利根有数の河港街・小見川の風景を、昭和20~40年代のものを中心に選り抜いた写真集です。
千葉県香取市小見川のMapion地図

サブタイトルに、「小見川の水運」という一語を入れてあるとおり、町営渡船や水辺の情景など、河川交通に関連した写真は、豊富に掲載されてはいるものの、決してそれだけではないところが、この写真集をより、魅力的なものにしているように思います。

まず、水運関連を眺めると、利根川高瀬舟の最後の一隻、高崎丸の棹での航行風景、舷側まで通学の生徒を満載して走る、息栖~小見川渡船、阿玉川のエンマをゆくサッパ…などなど、史料として極めて貴重なショットも、少なくありません。個人的にはもう、興奮の連続(笑)で、この方面に興味のある向きには、そそる写真が満載、と言って間違いないでしょう。

別の意味で、面白く思ったのは、祇園祭りの盛大さや、花街としての側面を写したスナップもさることながら、NHKの素人のど自慢大会の会場となったり、また町営球場でのプロ野球戦も行われるなど、当時の小見川の殷賑ぶりを、うかがわせる写真でした。
昭和20~30年代の河港街が、水運による物流拠点として、いかに経済力を持っていたかを知ることができ、ある種圧巻ではありました。

よき時代の日常を、丁寧に切り取ったようなカメラアイは、地元在住カメラマンの面目躍如といったところですが、それにつけても、街の人々のスナップを見て思うのは、この時代の小見川住民の、表情の明るさと身なりのよさです。
産物の集散地、地域の中心としての誇りが、この街の人々の顔に、現れているように感じられたものです。

惜しむらくは、小見川市街を一覧できる地図のたぐいが、全く載せられていないことでしょうか。
建物や橋などの、魅力的な写真も少なくないのに、街の中心を流れる川と、それらの位置関係が把握できないのは、残念なところです。当時の小見川を描いた、絵地図が添付されていれば、利根川水運史ゆかりの地を探訪する人のためにも、役立つものになったことでしょう。