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海難救助の思い出

昔の話で恐縮ですが、今回はちょっと子供っぽく、自慢話(?)をさせてください。川走りを始めるより少し前、先代艇に乗っていたころの話です。

FI2617875_1E.jpg三浦市を母港としていたころ、何度か、他艇を救助する機会がありました。もっとも、救助、というと大げさなレベルかもしれません。
バッテリーが上がって、エンジンのかからなくなった大型艇を、桟橋まで曳航したり、ブームが外れてしまって、帆走できなくなったディンギーを、やはり浜まで曳いてあげたり…といった程度で、近くを通りかかった艇としては、当然のことをしたまででした。

恥ずかしながら、こちらが助けられたこともあります。何分陸の上と違って、電話一本で、間なしに救急車やパトカーが飛んでくるわけではありません。ほんの通りすがりであっても、お互いの状態を気遣うことが、クルマとは比べものにならないくらい、重い意味を持っているのが、フネの世界ともいえるでしょう。
今でこそ、携帯電話が普及して、またBANに代表されるようなレスキューサービスもでき、沿海域における小型船舶の救助体制は、充実したものになってはいるものの、漂流は即、人命に関わる場合が多いので、遭難艇を横目に通り過ぎる、というわけにはいかないのです。

増して、そんな便利なものは無きに等しかった、十ン年前においておや。
中でも特に思い出深かったのが、これからお話する「海難救助」でした。

夏も、終わりに近いころだったと思います。今日で乗り納めて帰ろうと、相模湾に出て、三浦半島西岸に沿って北上、船影の少ない、爽やかな海を楽しんでいました。
確か台風が過ぎた後で、風はやや強く、波がありましたが、うねりの波長が長いため、快調に飛ばすことができた覚えがあります。

しばらく直進していると、2枚(数え方がこれでいいのか、わかりませんが)のウィンドサーフィンが、波間に浮き沈みしているのが見えてきました。

ウィンドサーフィンも、上手な人になると、ボートも顔負けの高速で、かなりの距離を走ることがあります。実際、江ノ島沖で、10ktは出している私の艇を、余裕で追い越していった女性のウィンドサーファーに、出くわしたこともあるくらいです。

とは言うものの、ここは岸から1kmは離れており、ウィンドサーフィンで遊ぶ水域としては、ちょっと沖に過ぎます。速度を落として、様子を見ることにしました。

観察していると、1枚はセールを倒したままで、乗っている人は、ボードの上に座っているようです。少し離れたところにいるもう1枚は、帆走しているのですが、風が強いせいでしょう、すぐにセールが倒されて、乗っている人も投げ出されてしまい、またセールを立てては倒され…を、繰り返しています。

周りをよくよく見回しましたが、随伴艇らしい船影は見えません。ううん、この場所で、この状態はマズいなあ…。
だいぶ近づいてきたせいか、帆走している方の人の、声が聞こえました。
「大丈夫! すぐ助けるから!」ボードに座っている人に向かって、叫んでいます。
やはり、遭難しかかっているようです!

さらに近づくと、帆走している人は男性で、座っている人は女性であることが判明。これには感動させられました。
定期航路もほとんどなく、沖に流されたらまず船影を見ることはない、この相模湾で、彼は命がけで、彼女を救おうとしているのです! 

セールを倒されてしまうような強風、しかも風は陸から吹いている(正確な風向は覚えていませんが、岸から沖に向かって吹いていました)という悪条件下で、あるいは無謀ととられる方もいるかもしれませんが、ダメだとわかっていても、助けに行かずにはおられない彼の心意気に、掛け値なしの「男の中の男だ!」と、思ったものでした。

彼らに近づき、「引っ張ってあげようか?」と声をかけると、「お願いします!」と男性が応えたので、艇をボードに寄せ、曳航の準備に取りかかりました。よく見ると、女性の乗っていたボードは、マスト(?)のジョイント部(?)が壊れて、セールが立てられない状態だったのです。これでは、戻ろうにも帆走することができません。

私的には、ピンチの二人を前に、カッコよく(笑)駆けつけたつもりでしたが…。
当時は私もまだ初心者、正しい曳航の知識もありません。セールのついたままでボードを曳航しようとして、ロープが切れてしまうという醜態を演じ、最初の勢いはどこへやら。
しばらく悪戦苦闘したあと、2人にも協力してもらい、セールを分解して収納、ボードは横抱き曳航することにして、なんとか出発。

幸い、二人とも怪我もなく元気で、彼らの仲間が待つ海水浴場を教えてもらい、30分ほどかかって、仲間のもとに無事、送り届けることができました。

この話には、後日談があります。
三浦から帰って、一週間ほど後だったと思います。私宛に、知らない人から宅配便が届きました。ハテ、何だろうと包みを開けてみると、贈り物とともに手紙が入っていて、「先日海で助けていただいたものです」云々、との文が。ウィンドサーフィンの二人が、贈ってくれたものでした。

ビックリすると同時に、本当に嬉しくなりました。
特に名乗らず分かれたので、手がかりと言えば、舷側に書かれた艇名くらい。マリーナをつきとめ、私の住所を聞き出すまで、相当な苦労があったに違いありません。その心遣いが、たまらなく嬉しかったのです。

このお二人とは、その後も年賀状のやり取りが続き、しばらくして、結婚された旨の手紙をいただきました。
奥さんのためには危険も辞さない、「男の中の男」が旦那さんなのですから、きっとお幸せに暮らされているに、違いありますまい!

(浦安沖、19年6月23日撮影)