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外輪式手動船外機(!)の思い出

今を去ること、20ン年前の思い出話です。何分昔のことなので、細部がよく思い出せないところもあり、恐縮ですが、お付き合いください。

父に連れられて、今はなき晴海の国際展示場で開催されていた、ボートショーを見に行ったときのことです。
新進らしい、アルミボートメーカーのブースの片隅に、奇妙な機械が展示されているのを、父が発見して「こいつは面白いな! 買ってみるか?」と、笑いながら私に言いました。

グレーに塗られた、鉄板製のその機械を見ると…なんと、テコを手で押し引きすると、4枚羽根の水車が回転するという、手動船外機とでも言うべきものでした。
手で外輪を動かすという、発想の奇抜さと、まるで工作機械のような外観に、私もすっかり乗り気になり、二つ返事で承諾。父が、こういうものに興味を示すこと自体、珍しかったせいか、このときのことは、今でもはっきり思い出すことができます。

FI2617755_1E.jpg話だけでは説明が難しいので、画力のなさも省みず、エンピツをなめなめ、ポンチ絵を描いてみました。
買ったときの情景は、鮮明に覚えているのですが、こうして絵を描いてみると、現物のディテールの記憶が、情けないことにほとんどありません(泣)。
特に、クランクやフレームの構造があいまいで、この絵の通りでは、理屈に合わないところもあるかと思いますが、どうかご勘弁ください…。

普通の小型船外機と同様、トランサムにCクランプで取り付けます。クランプにはヒンジがついており、本体を左右に振って、方向を換えることができました。水かきはご覧のとおり、鉄板を組んだ単純なもので、ロッドを避けるため、左右二組に分かれていました。

洗練されたところが微塵も感じられない、武骨そのもののデザインに、かえって惚れ込んでしまったあたり、このころから好みが変わっていないのだなあ、と、苦笑するばかりです。

頑丈な木箱に、完成状態で梱包されてきたコレを、長さ3mほどの、FRP製テンダーボートに取り付け、当時の母港があった湾内を、走り回ってみました。

なにしろ、結構な面積の水かきが、絶え間なく水を叩き、すくい上げるのですから、音はかなりのものです。おまけに、盛大に水しぶきが上がるため、その目立つことったら…(笑)。ガババン、ガババンと音を立て、豪快?に進む小さなテンダーは、沿岸の人たちにとって、もう珍奇な見世物(笑)だったと思います。

嬉しくなって、何度か走り込んでみると、子供なりに、いくつかのことがわかりました。
駆動のからくりと、重量がある分、オールで漕ぐより、はるかに力がいること。
オールなら、惰力で岸につけたりといった芸(?)ができるのにくらべ、外輪を止めると、水かきが抵抗となってしまい、惰力がほとんど効かないこと。

また、水かきが一枚板なのも、ロスが大きいように思えました。水かきが水面から出るとき、大量の水をすくい上げてしまうため、水の重さの分、余計な力がいるからです。水かきの面積をもっと小さく、先端部分だけにしたら、水はけが良くなり、もっと軽い力で回せるのにな…と、考えたものです。

この考えは、のちに、実物の外輪船の構造を、詳しく説明した記事に出会って、間違いではないことがわかりました。(外輪の実物は『上川丸に会いにゆく…2』を参照)
高速の外輪船になると、水かきが可動式になっており、ロッドによって、水に入ってから出てくるまで、垂直な姿勢を保つような構造に、作られているものもあったそうです。
外輪も、単純なようでいて、スクリュープロペラと同じく、効率を追求した歴史があったのですね。

手動船外機のその後ですが…。
さすがに、船舶免許を取ってエンジン付きの艇に乗るようになってから、すっかり使わなくなり、海辺にあった親戚の家に預けておいたら、その家が火事にあって、いっしょに焼失してしまいました(泣)。

きちんと保管しておけば、珍物として、皆さんにご覧に入れることができたのですが…。まあ、長じて、川を走る外輪船が好きになり、外輪そのもののハンドルを名乗るようになるとは、考えもしなかったころから、外輪に親しんでいたというお粗末です。

この、恐らく空前絶後と思われる、「ポータブル外輪」を作っていたメーカーが、どうしても思い出せません。
数種類のアルミボートと、この手動船外機(確か、チェーンで駆動する、プロペラ式のものもありました)を掲載した、メーカーのパンフレットを持っていたのですが、なくしたのか、探しても見つからないのです。

ボートのラインナップも変わっていて、四角い横帆と櫓(!)がついたカタマラン(双胴船)、キャンプに使う、テントを乗せたようなハウスボート、平面のみで構成された、重ねて収納できるアルミボートなど…。
その珍妙さ(失礼)が、かえって興味を引き、いかにも造船の経験がない業者が、新規参入したといった感じで、強く印象に残っているのです…。

どなたか、ご存知の方はおられませんか?