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長瀞渓流下り…1

FI2617487_1E.jpg『長瀞の観光船』で紹介しましたが、昨年は舟を目の前にしながら、乗れずに残念な思いをした、秩父市は長瀞にある、有名な木造和船での渓流下りに、念願かなって乗ってきました。

親鼻橋上流の河原にある船着場には、すでに何艘かの舟が、舳先を連ねて待っていました。写真のように、河原の一部が掘りこまれて、舟入りが造られており、ちょっとした河港のおもむきです。
戸立て造りの頑丈そうな舟は、全て地元で建造されているそうで、写真のものは定員24名。船首に竿を持った船頭さん、船尾には長い櫂舵で、舵を取る船頭さんが乗って、2名で舟を操ります。

渓流下りは、親鼻橋の基点から、高砂橋近くの終点、約6kmの間で運航されていますが、今回は親鼻橋から、長瀞駅近くの中間点、岩畳まで約3km、時間にして20分ほどの区間を乗船しました。

FI2617487_2E.jpg筋骨隆々の、頬髯も男らしい船頭さんが、竹竿を持って乗り込むと、いよいよ出発です。
船頭さんの金剛力に、太い竹竿がびゅうんと音をたててしなり、方々に顔を出す岩を、巧みに避けて舟を操る妙技に見惚れました。

出港直後、岸のそこここに立つ釣り人さんに向かって、船頭さんは一人一人「すいませーん!」「こんにちはー!」と、丁寧に声を掛けています。
私としてはピンとくるものがあり、「やっぱり(釣り人が)うるさいんですか?」と尋ねると、
「釣り糸切ったりなんかしたら、そりゃもう凄いもんだよ!この前なんか、3万円請求されちゃった。なんだか、最近のルアーやら針やらって、高いんだってね~」
「それ、会社が払ってくれたんですよね?」
「ううん、自腹」
…な、なにか納得がいかない…。あちら(釣り)は趣味、こちらは仕事、そしてこの水面は、地元の大切な観光収入源である航路、のはずですが。まあ、釣り人さんも、地元にとってはお客さんには違いないので、穏便に済ますということなのでしょうか。

FI2617487_3E.jpg舟は流れに乗って、結構な早さで進み始めました。同乗の人も口々に「意外と早いね」と驚いています。

水は美しく澄んでおり、水底の岩や、泳いでいる魚が、手に取るように見えます。それだけに、ある種恐ろしくもあり、いまにもゴリゴリと、舟底が岩を噛まないかしらと心配していたら、さっそく「ガリガリッ」と鈍い音が!
船頭さんは落ち着いたもので、「水深30cmあれば大丈夫だよ、それに(船体には)グラスファイバーを塗って、丈夫に作ってあるから」と言いつつ、手を休めずに竿を右へ左へと突いていきます。

右手には、水位観測塔が見えてきました。頑丈そうなコンクリート製の外観と、異常に高い脚部分に、この流域の厳しさを、かいま見たような気がしました。

FI2617487_4E.jpg国道140号線の親鼻橋です。この橋をはさんだ上流と下流に、3つの会社が川下りの基点を持っています。
撮影地点のMapion地図

先ほどの船頭さんの言葉が、印象的でした。「水深30cmあれば大丈夫」、つまり通船できる…。
かつての関東地方には、高崎、前橋や栃木といった、驚くほど上流部まで河岸、つまり川の港が点在していました。どんな細流でも、舟と積荷を浮かすだけの水深があれば、人馬のそれとは、比較にならない輸送力を発揮できたのです。
船頭さんの一言で、水運全盛時代を体験しているような気がして、なんだか感動してしまいました。

FI2617487_5E.jpg古風なレンガの橋脚を持つ橋は、秩父鉄道の荒川橋梁。背高のっぽの古い桁橋に、霧にけむる背後の山々がよく似合い、まさに深山幽谷のおもむき。

秩父鉄道のサイトによると、長さ167m、水面からの高さ20mだそうです。華奢に見える橋脚も、近づいて見ると、水切り部に石材を使うなど、水流の激しさを物語る重厚な造りで、一瞬、船上ということを忘れて見入ってしまいました。

(18年7月2日撮影)

(『長瀞渓流下り…2』につづく)