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魅惑の水郷…6

FI2617479_1E.jpg(『魅惑の水郷…5』のつづき)
橋や建物が所々に見えるものの、開けた風景の中を、ひたすらまっすぐに走る水路は、まるで遠近画法の見本のようで、果てしがないような錯覚におちいります。

十二橋と違い、全区間をエンジンで航行したため、かかった時間はさほどではありませんでしたが、こちらも、今までに経験したことがないタイプの水路でしたから、新左衛門川とは、また別の感動がありました。
見渡すかぎりの広大な沖積低地を、無数のエンマと、そこを行き交うフネブネで美田にしてきた、この水郷の歴史が、髣髴できるようだったからです。かけがえのない、日本の水路情景の一つが、ここに守られていたことが、実感できました。
なお、この水路の名前を、船頭さんに聞くのを忘れてしまったので、ご存知の方がおられたら、ご教示いただきたいと思います。

右の写真は、途中で出会った、おそらく灌漑用水路のスライドゲート。
とっさのことでしたので、あまりいい写真が撮れず、正面の銘板もよく判別できませんでしたが、おそらく扇島水門と思われます。この直後にも同じような水門があり、二重になっているようでした。間違っていたらごめんなさい。
撮影地点のMapion地図

FI2617479_2E.jpg私にとっては、夢のようだった水郷遊覧を終え、船頭さんにお礼を言って、サッパを降りました。近いうちに、ぜひまた来てみたいものです。

日もすでに傾きかけましたが、せっかく水郷まで来たのだから、アレもぜひ見ておこうと、某所にクルマを走らせました。
で、到着してまず目に入ったのが、この「閘門」バス停! 利根運河の「運河駅」のように、水路関連の普通名詞が、そのまま名前になっているのがなんとも言えず、イイ感じです。
時刻表を見ると、残念ながらあまり本数はなく、利用しやすいとは言えないようですが。
水門ファンはもうおわかりでしょうが、その「アレ」とは…。

FI2617479_3E.jpgそう、横利根閘門です。
横利根川が、利根川に合流するところに設けられたこの閘門、コンクリート製の堤体に、赤レンガと石材でお化粧した姿は、水郷の緑豊かな情景と相増し美しく、つとに有名です。
大正10年に完成したものが、自動化、扉体交換など改修を重ねながらも、今日まで現役で稼動していること、横利根川と利根川の、いずれからも水圧を受けてもよいように、マイタゲートを二重にした、複閘式となっていることなど、特徴の多い閘門でもあります。

現在は、利根川側に、堤防と横利根水門が設けられたため、逆流防止の役目からは開放されていますが、水位差のある際の通船は、依然として閘門に頼っており、周囲は美しく公園化されて、稲敷市民の憩いの場となっています。

上の写真は、利根川側門扉を堤防上より見たものです。本やサイトで、くり返し見た情景が目の前に広がるのは、何度経験しても、感動があるものですね。
下は横利根川方を撮ったものですが、こちらは釣り人さんが集中しており、ある種鬼気迫る雰囲気(笑)で、話し声を立てるのすらためらわれ、早々に退散しました。
撮影地点のMapion地図

FI2617479_4E.jpg嬉しくなって、閘門の周りをうろうろしながら写真を撮っていると、いきなりアナウンスがあり、つづいて、なにか脳天気な感じ(笑)のする曲が流れ、利根川方の門扉が左右に開き始めました。
運良く、通過する艇が来たのです。喜び勇んで門扉に近づき、何度もシャッターを切りました。

二組のマイタゲートが、長いロッドに引かれて、水面にゆるゆるとした渦を作りながら開くさまは、メカニカルな面白さがありながら、一方で生き物じみた動きにも見え、興味深く見学しました。なにしろ、マイタゲートが作動するのを見るのは、これが初めてなのです。思わず、目を大きく見開いてしまいました。

作動のメカニズムは、よくあるローラーゲートより複雑そうで、門扉が二組ということもあり、もっと騒々しいものかと、思っていました。ところが、露出したギヤやチェーンの音もさほどでなく、全体としてはむしろ静かなのです。
これは、ローラーゲートが、吊っているワイヤーから戸当たりに、重量を支える部分が変わる際、どうしてもゴーンと、大きな音がしてしまうのに比べ、マイタゲートは、閉じても開いても、重量を支えるのはヒンジだからでしょう。

FI2617479_5E.jpg閘室の中は、法面に木枠が組まれ、船の接舷に便利なように造られていました。横利根川のむこうに見える、大規模店がなければ、大正や昭和初期の写真と、ほとんど変わりはありません。
もちろん、何度も改修はされているので、昔のままの眺めではありませんが…。
下写真の、石造りの台の上に鎮座した門扉の駆動部分や、その下のバルブハンドルらしきものも、よく見ると最近のモノだったり、あるいはモーターライズされていたりと、決してそのままではないのです。

ただ、雰囲気を壊さない配慮は、ある程度されているため、パッと見た感じでは、「近代化改造」と悟られることはないでしょう。やはり、水郷の象徴のひとつとして、大切にされているのですね。

いや~、1日に3つも閘門が見られる日なんて、そうそうありません。しかも、どの閘門も、動くところを見ることができたのですから…。
ゲップが出そうな満足感を胸に、夕暮れの水郷大橋にハンドルを切り、帰路についたのでした。


素晴らしい水路と、いくつもの楽しい閘門に恵まれた、平水域の理想郷、水郷!
やはり、百聞は一見にしかず…イヤ、本で何度も読んで、百聞したからこそ、実際に体験した時の喜びも、何倍にもなったのかもしれませんね…。

前にも書きましたが、レンタルボートを借りて、自ら舵を取り水郷を探検したら、それはもうイージーかつ楽しいでしょう。
また、余裕があったら、自艇を陸送して、水郷のマリーナまで持ってくるのも、いいかもしれません。

でも、心のどこかで、「それは反則なんじゃないか?」という声が、あるのも確かです。東京から、指呼の距離にある水郷…やはり、水路を自力で航行して、愛艇とともに訪問できる、そんな水路環境がととのう日を、待ちたいと思います。

いつになるかなあ…。

(18年5月4日撮影)

(この項終わり)