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魅惑の水郷…3

FI2604429_0E.jpg(『魅惑の水郷…2』のつづき)
目前に迫る、小さなコンクリート橋をよく見ると、桁の側面には「あじさい橋」と彫られた、立派な銘板がはめ込まれ、欄干にはその名の通り、あじさいがあしらわれていました。最近造られたようですが、派手過ぎない装飾に、小さな橋の可愛らしさが相増し、好ましく感じました。

欄干には「これより十二橋 エンジン停止 佐原警察署 加藤洲区長」と書かれた看板が。間もなく船頭さんは船外機を止め、よいしょ、とチルトアップすると、やおら、舷側の段差部に引っ掛けてあった竿を手にし、「こっからは、竿で行くからねえ」と言いました。
ささ、さお?あの、「竿は三年櫓は三月」と言われる竿? 路地のような水路というだけで嬉しいのに、この上竿さして進むことができるとは! 解っているはずなのに、うろたえっぱなし。
もう萌え死にますわ…(笑)。

FI2604429_1E.jpg竿さすわずかな水音のほかは、ほとんど音のない静かな水路。我々の声が妙に大きく聞こえるほどです。
切石でととのえられた護岸は、落ち着いた、清潔感のある雰囲気で、護岸と言うよりは、路地裏の万年塀のよう。
コンクリ護岸にしないあたりが、この街の心意気なのでしょうね。

水路が左に曲がったあたり、もとは店らしい廃屋がありました。田舎の駅の、ホームのような造作が目を引きます。舟に乗ったまま、買い物ができるのかなと思ったので、ちょっとがっかり。
せっかくのいい雰囲気が、ここだけ、なにか物悲しい感じになってしまい、やはり、かつてに比べて、お客さんが減ったのかしら?と思ったり。

廃屋の脇には、なんと、わずかサッパ一艘分の、かわいらしい舟入り(ふないり)が!
いや~、私の好みのど真ん中、ステキな水路情景の連続に、息つく暇もありません…。
撮影地点のMapion地図

FI2604429_2E.jpg角を曲がりきると、背の高い橋脚に載った木橋が、家並みに挟まるようにして、狭い水路にいくつも架かる、十二橋おなじみの風景がひらけました。

「おなじみの」などと、シレッと書いていますが、もう興奮の連続で、「いいねえ、ステキだねえ!」を連発し、やたらとシャッターを押しまくる姿は、単なるだらしない観光客(笑)。
見れば、女性がカメラをかまえている橋の下、「十二橋名物 草もち みたらし団子」の看板が! 先ほど見た廃屋で、舟からの買い物はできないものと、がっかりしたばかりですから、嬉しさも倍しようというもの。
「おだんご食べてくかい?」と、船頭さんがまた、タイミング良く声をかけるものですから、ますます欲しくなり、二つ返事でお願いして、さっそく舟を横付けしてもらいます。

よしずの下がった縁側には、木の台が張り出してあって、船頭さんと同じような笠をかぶったおばさんが、座布団に座って、お皿に盛った草団子を差し出してくれます。興奮していた上、代金を払ったりお団子を受け取ったりと、忙しかった(?)ので、肝心なときに、ろくな写真が撮れずじまいでした…。

FI2604429_3E.jpg団子屋さんを離れると、行き合い舟が続々と現れました。
岸に繋いである舟もあり、両方同時に進むことはできないので、我々の舟がしばし留まって、数隻をやり過ごします。どれもオーニングを張った密閉式で、前面の窓は引き戸のため、視界は限られそうです。今さらながら、開放式だったことに感謝しました。

水路幅は、行き違いにぎりぎりの幅しかなく、対向舟と擦れ合いそうで、しかもフェンダーを下げていません。いつもの習慣で、私が対向舟の舷側を押そうとして、手を出すと、
「いいんだよ、手ぇ挟まれるから、引っ込めてなさい」と、船頭さんにたしなめられました。
見ていると、どの舟も構わずに、岸や我々の舟に、ガリガリと擦って通ってゆきます。なるほど。キズでもつけたらと心配するのは、遊びブネの悪い癖ですね。

FI2604429_4E.jpgたくさんの小さな木橋、ガレージのような舟入りと、個々の家のために造られたものの集合体であるところが、十二橋の水路風景の魅力なのですが、いまひとつの魅力は、水路に向けて開かれた玄関が、そこここに見られるところでしょう。

石段をあつらえ、鉄環を打ってもやえるようにした、水辺の玄関は、私から見ると、もうそれだけで理想郷の風景ですが、写真のように、花咲き乱れる鉢植えで、美しく飾られた石段を見ると、この地の風景を、本当に大事にされているなあと、感に堪えません。

(18年5月4日撮影)

(『魅惑の水郷…4』につづく)