FC2ブログ

浦安市郷土博物館…2

FI2398875_0E.jpg(『浦安市郷土博物館…1』のつづき)
船大工氏に招かれ、さっそく打瀬舟の船上へ。木造船に土足で上がり込むのは、靴の跡がつきそうで、少し抵抗があるのですが…美しく整備されているだけに、なおさらです。
船体長は6mほどでしょうか、船体は展示のために新造したもので、「これもオレが造ったんだよ」と船大工氏。エンジンは再生品だそうです。

機関室のフタを上げると、油の染みた架台の上に、小さいけれど、ごついエンジンが納まっているのが見えました。立ち昇るオイルのかおりは、このエンジンが生きている、何よりの証しです。
右の長い棒がクラッチレバー、メーター(壊れていますが)の横にある、ラッチ付きの小さい握りが、キャブレター調整レバーです。

FI2398875_1E.jpg船大工氏の説明を聞いていると、スタッフジャンパーを着た女性が乗り込んできて、「回そうか?」と言いながら、機関室にもぐり込み、慣れた手つきで準備を始めました。

昔の舶用エンジンですから、もちろん人力始動です。クランクを回す腕に、力がこもりました。お役を奪われた?船大工氏は、「こんな重いものを、女の子が回しちゃうんだからなあ、まったく型なしだよ。」とくさしながらも、孫に孝行されたおじいちゃんの雰囲気で、ニコニコして見守っています。

やがて、ボムボムボムッ、と腹に響く爆音とともに、左舷の排気口から、白い排気と冷却水が勢いよく吐き出されてきました。キャブレターを開けたのでしょう、爆音はいよいよ高まり、船体がビリビリと振動しているのがわかります。エンジンの音を聞きつけて、集まってきた他の見学者の方々も、あまりの音と煙に驚いています。
2サイクルエンジン独特の、オイル臭もかぐわしい白い排気に包まれて、私は興奮の極みでした。

FI2398875_2E.jpgこちらも、動態保存されている、舶用焼玉エンジンです。
船大工氏の話では、なんと、江戸川に沈んでいた沈船から引き上げて取り外し、3年あまりをかけて復元、可動状態に整備したとのこと。サルベージに労力を割いてまで保存に取り組んだあたり、この種のエンジンの絶滅ぶりをうかがわせ、興味深いものがあります。
結構なカサがありますが、昔のエンジンのことですから、出力は数十馬力程度だそうです。私の艇と同じか、低いくらいの馬力ですね。

焼玉エンジンとは、プラグの代わりに、外部からの熱で燃料に着火させる、「焼玉」というしくみを備えた内燃機関です。昔は舶用や機械の動力に多用され、珍しい例では、機関車にまで使われたこともあるそうです。

こちらはさすがに、搭載できる船を作る余裕はないようで、街の鉄工所風にしつらえた小屋の中に納まっていますが、展示のしかたとしては、実にいい感じです。
古い自動車や、蒸気機関車などの動態保存は、今や珍しくありませんが、船舶関連のものはまだしの感があります。
それが、ここでは先ほどの打瀬舟に加え、焼玉エンジンと、2台の舶用機関が動態保存されているのですから…浦安市の心意気や、ここにありといったところでしょうか。

FI2398875_3E.jpg興奮また興奮のひとときが終わり、頭を下げてお礼を述べると、船大工氏は「今度は焼玉を動かすから、またぜひ来てください。他の展示もゆっくり見てらっしゃいよ」と、笑って送り出してくれました。本当にありがとうございました!

いまひとつの目玉展示物は、昭和27年前後の浦安の一角を再現した、小さな町並みです。天ぷら屋、三軒長屋といった10軒の木造家屋のうち、4軒が実際使われていた移築物で、浦安市の文化財にも指定されています。
この類の展示は、どうしてもアレンジがきつ過ぎて、わざとらしくなってしまうきらいがありますが、実際拝見すると、思ったより自然な感じで、路地を抜けるときなど、子供のころを思い出して、なにかジーンときてしまいました…。

写真正面の船宿は、「もやいの会」(博物館ボランティア)の詰所にもなっており、船大工や船頭の経験のある方々の、お話を聞くことができます。
左隣の「漁師の家」に入ってみると、土間の台所の上の神棚、上がりかまちの棚に仏壇、そこここにまつられた幣や注連縄…小さな家ながら、まさに神様と仏様に囲まれつつ、暮らしていたことが実感でき、圧倒される思いがしたものです。
展示物ながら、神棚も仏壇もきちんと祀られて、粗末な扱いをされていないところにも、好感が持てました。

FI2398875_4E.jpg船宿の右隣、「タバコ屋」を称する2階建て家屋の室内を、裏の縁側から見たところです。
猫の額のような縁側や、急な階段の雰囲気が、亡くなった祖母の家と似ていて、懐かしくなりました。
頭を丸髷に結った祖母が、「こづかいあげるから、駄菓子屋でも行っておいで!」と、商家の女らしい、枯れた声で言っていたのを思い出し、ふたたびホロリ。トシのせいかな、涙もろくなったのでしょうか。

他にも、館内で見た、浦安の歴史をまとめた映画では、苦渋の選択で漁業権を放棄して、浜で漁船を燃やすシーンで、お恥ずかしいですが涙ボロボロ…。
もちろん和船建造のお話やエンジンでも、感動のあまり目が潤みましたし、なんだか、泣いてばかりのヘンな奴になってしまいました。

まあ、それほど素晴らしい博物館ということです。ハイ。
「見学したけど、全然泣けなかった!」という、苦情はなしですよ…。

(18年3月12日撮影)

(『境川東水門』につづく)

【追記】コメント欄の、鎌海豚さんのお返事にも書きましたが、焼玉エンジンが、プラグの代わりに焼玉で着火させている、というのは間違いです。
ディーゼルエンジンと同様に、圧縮されるときの熱で着火させるのですが、圧力が強くとれないため、焼玉で噴射された燃料を予熱する、ということが判明しました。お詫びしてここに追記いたします。