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浦安市郷土博物館…1

FI2393190_0E.jpg去る3月12日は、本年初出動の予定でしたが、ご存知のとおり強風で、不安になりつつマリーナ事務所に出頭したところ、「東京灯標風速20数メートル、出港停止!」と言い渡されガックリ…。またしてもメンテだけして帰る羽目になりました。

まあ、遭難してのっぴきならなくなるよりマシと、気を取り直し、帰りは寄り道をして、以前から興味のあった、浦安市郷土博物館を、訪ねてみることにしました。

この博物館は、浦安周辺の和船建造技術の保存と、いにしえの町並みを再現した屋外展示に、力を入れていることで知られています。
江戸川河口の三角州につくられた街、かつての浦安は、戦後しばらくまで陸上交通が乏しかったため、漁業はもとより、人の往来や流通にまで、船が深く関わってきました。軒先に水路があり、船がもやわれているような情景が、日常の中にあったことでしょう。
それを再現して見せてもらえるのですから、水運好きとしては、興味の沸かぬはずはありません。

FI2393190_1E.jpg境川のほとり、浦安市役所前にある博物館の受付で来意を告げると、入館は無料とのこと、パンフレットをいただき、いそいそと館内へ。

木の香りに満ちた展示室には、頭上のラックや床上に、和船がところ狭しと置かれ、木造船の質感と大きさに圧倒される思い。
仮屋(作業場)も再現されていて、展示の一環として実際に作業もしていると見え、船大工らしい初老の男性が、使い込まれた工具を前に談笑していました。
写真は投網舟です。杉の柾目と、銅釘で打った銅板が美しく、しばし撫でさすりつつ見惚れました。危険防止のためでしょう、一本水押(ミヨシ)の先にかぶせものがしてあるのは、仕方がないとは言え、ちょっと残念でした。

FI2393190_2E.jpg我々に説明をしてくれた、船大工の男性(もちろん博物館の方です)に、「落とし釘」は?「木殺し」は?…と質問をぶつけてみると、ニヤリと笑って、作業場に招き入れていただき、熱心にお話を聞かせて下さいました。
少しは話が通じると、思ってくれたのでしょう。子供のころから、造船所に遊びに行っていた甲斐がありました!

上の写真が落とし釘です。
和船を作るには欠かせないもので、平たい形をしており、一本一本、専門の鍛冶職が鍛えます。これで数枚の板を縫い付けるように打つと、一枚板と、ほぼ変わらない強度を持つようになります。
これが作れる職人は、もう国内に何人もいないことは聞いていたので、どこから仕入れたのか質問すると、「横浜の方にいたんだけど、最近亡くなった」とのこと…。

木殺しとは、板の接合する面を、玄翁(木づち)で叩いて圧縮し、水に触れたときに板が膨れて、防水の役目をさせる技法です。
船大工氏が現在造られている、浦安ベカや、手舟(テブネ)といった種類では、木殺しの技法は用いず、もっぱら「すり合わせ」によるとのことでした。
すり合わせとは、板の接合面に、専用の鋸を入れてケバ立たせ、やはり組み立てたあとに板が水を吸って膨れ、よく防水するように加工するやり方です。下の写真は、すり合わせの説明を受けているところ。両側から板を押さえ、合わせ目に鋸を入れるのです。

FI2393190_3E.jpgこれが、船大工氏が作った「手舟」です。

棚板(側面の板)の開きが少なく、幅の割りに長さのあるファインな船型で、いかにもスピードが出そうですが、上手に漕ぐのには熟練がいりそうです。でも欲しいなあ…。
「一丁櫓で漕ぐと、面白いくらい早いよ。ただ、幅がなくてグラグラするから、人は何人も乗せられないがね」と、笑って説明してくれました。
もとはボラなど、すばしこい魚を網に追い込むために使われたものらしく、搭載量よりも、速度が要求されたのでしょう。

木材は外国産ですか、と伺うと、バカ言っちゃいけないよ!という顔をされてしまいました。「印旛沼の近くで採れたのがいいんだよ」とのこと。これは失礼しました!
建材は言うに及ばず、墓石や食品に至るまで、大陸産が幅を利かせている昨今、和船にその魔の手(?!笑)が及んでいないとは、ホッとすると同時に、感動ものでした。

FI2393190_4E.jpg話は素材選びから、工具の使い方までに及び、船大工氏の熱のこもった話術にぐいぐい引き入れられ、興奮した私の顔は、きっと紅潮していたと思います。一時間くらいだったでしょうか、実に濃厚な、充実した時間を過ごした気がしました。
まさか、このあとさらに興奮するイベントが続こうとは…。

説明が手舟を離れ、屋外展示の水路に浮かぶ二本マストの船、「打瀬舟」に移ると、「エンジン、動かしてあげようか?」と船大工氏。
旧艇と別れて以来、久々に2サイクルエンジンの爆音と、オイル臭のする排気を、間近で体験できることと相成りました!

浦安市郷土博物館のHPはこちら

(18年3月12日撮影)

(『浦安市郷土博物館…2』につづく)